効果検証
一般社団法人実践行動学研究所では、実践行動学プログラムの効果を検証するために、OECD(経済協力開発機構)がまとめた社会情動的スキルの枠組みから学生の意識変化を調査するアンケートを独自に開発しました。現在、実践行動学プログラムを導入中の一部専門学校の協力のもと、プログラム実施前・実施後の学生の意識変化を継続的に調査しております。今回は、調査報告の第一弾をご案内します。
- 目 次 -
- 『社会情動的スキル』とは
- 専門学校生の『社会情動的スキル』に関わる調査について
- その他の効果検証
『社会情動的スキル』とは
『社会情動的スキル(Social and Emotional Skill)』とは、自身の感情をコントロールする能力や他者との関係性を築く力などを指し、ノーベル賞を受賞した経済学者ジェームス・ヘックマンが提唱しました。近年、世界的に社会情動的スキルへの注目は高まっており、OECDもこれらのスキルの重要性を強調し、教育政策に取り入れる動きを進めています。2018年OECDは社会情動的スキルを3つの要素とそれを構成する10の項目にまとめています。
専門学校生の『社会情動的スキル』に関わる調査について
調査概要
実践行動学研究所ではプログラム導入中の9校のご協力を受け、2024年度よりプログラム実施前・実施後の学生の意識変化の調査を行っています。今回は、3つのPartから構成されている実践行動学プログラムのうちPart1とPart2の実施前・実施後における「目標の達成」と「感情のコントロール」に関連する自己認識の変化についてご報告します。
※本調査で用いた値の算出法
社会情動的スキルの「目標の達成」を構成する【忍耐力】【自己抑制】【目標への情熱】、「感情のコントロール」を構成する【自尊心】【楽観性】【自信】の6つの項目について、それらを身につけるために必要な知識や考え方を持てているかどうかを4段階で質問する独自のアンケート調査を実施しました。プログラムの実施前・実施後の回答について、ポジティブな回答(4段階の上位2つ)を選択した学生の割合(=ポジティブ回答率)を算出し、その変化を観測しました。
【調査協力校 9校】新潟ビジネス専⾨学校 / 新潟デザイン専⾨学校 / 新潟農業・バイオ専門学校 / ⻑岡こども‧医療‧介護専⾨学校 / 国際こども‧福祉カレッジ / 国際ペットワールド専⾨学校 / 三条看護‧医療‧⻭科衛⽣専⾨学校/ アップルスポーツカレッジ / 国際アート&デザイン⼤学校
調査結果
- 調査結果Part 1
- 実施前 n=818
- 実施後 n=866
- 調査結果Part 2
- 実施前 n=443
- 実施後 n=427
- 今回の調査でわかったこと -
- Part1プログラム実施後では、6つの項目のすべてで数値が上昇し、「目標の達成」領域の数値変化がとりわけ大きかった。
(ポジティブ回答率の6項目平均が16.5%上昇、「目標の達成」領域3項目では21.8%上昇) - Part2プログラムにおいては、実施前からポジティブ回答率が高い値を示した。
(ポジティブ回答率の6項目平均:Part2実施前80.8%) - Part2プログラム実施後の調査では、6項目のすべてにおいてポジティブ回答率が90%を超えた。
(ポジティブ回答率の6項目平均:Part1実施前64.8%→Part2実施後92.2%)
- 1に関する考察
- Part1プログラムでは、『夢と目標』、『行動のよりどころとなる意欲的な心構え』について重点的に扱っている。方法論を学んだ上で自分自身の具体的な目標設定を行うことが、数値の上昇に繋がっていると考えられる。
- 2に関する考察
- 多くの学校ではPart1とPart2のプログラム実施の間に半年ほどの期間を設けているが、Part2実施前の段階で高いポジティブ回答率が得られていることから、Part1の学習効果が半年経過後も持続していると考えられる。
- 3に関する考察
- ポジティブ回答率の推移を見ると、Part1実施前64.8%→Part1実施後81.3%→Part2実施後92.2%であった。これはPart1とPart2の両方のプログラムの修了後には、9割以上もの学生が「目標の達成」と「感情のコントロール」を構成する6つの項目に寄与する知識や考え方を習得していることを示している。
実践行動学プログラムを学習した学生の多くは、社会情動的スキルに関する自己認識が向上した。グループでの演習を通じ自己理解が深まり、対話や相互承認による他者との関係の中で数値が上昇したことが認められる。
調査を行った背景と今後の展開について
ここ数年、世界的に非認知能力への関心が高まっており、日本でも国や地方自治体レベルの政策で、子どもたちの非認知能力(主体性、責任感、他者と協力する能力など)の育成の重要性が強調されるようになってきました。しかし、認知能力と非認知能力では育成の方法が異なるため、戸惑いを感じる教員も多いようです。そのため教育現場では子どもたちの非認知能力を育成できる教育者の養成が急がれています。
実践行動学研究所では以前より偏差値には現れない人間力、非認知能力の重要性に着目しており、1987年に動機付け教育プログラムを開発して以来、40年近く現場教員の意見・要望を取り入れながらプログラムの品質改善に努めてまいりました。改善ポイントはプログラムの内容や効果向上にとどまらず、プログラムの扱いやすさ、つまり教員にとっての指導のしやすさも含まれております。
その成果として、実践行動学プログラムに興味を示される教育関係者が増えてきていると感じております。同時に教員の方が個人として興味を持った際、学校として実施するためにプログラムの効果を目に見える形で示してほしいというご要望も増えてきました。
そこで、前述した社会情動的スキルの枠組みを活用して、実践行動学プログラムの効果を見える化する試みに着手することとなり、今回の調査報告に至りました。
今後は以下の点についても調査し、公開していく予定です。
- 本プログラムをPart3まで実施することでもたらされる学生の意識変化について
- 学生の意識変化が行動変容にまでつながるか
- 学生同士の対話を重視したアクティブ・ラーニング型の実施形態が、社会情動的スキルのひとつである「他者との協働」にどのような影響を及ぼすか
その他の効果検証
実践行動学プログラムを導入していただいた学校には、モチベーションの変化を知る指標として、学生一人ひとりに対してプログラム実施前と実施後に『モチベーション自己診断』を行っていただいています。そのデータをもとに埼玉県熊谷市のアルスコンピュータ専門学校様のプログラム導入学科と未導入学科の比較調査を行いました。以下にその集計結果を掲載しております。